はっきり好きだと伝えたわけじゃない。
『ずっと、俺のそばにいれば?』
曖昧にそんなふうに言った言葉は、まちがいなく告白の言葉だった。
真央には他に好きな男がいるって知ってたけど、それでも真央は笑ってオッケーしてくれた。
初めての彼女で、付き合うということがよくわかってなかった俺たちは、いつまでも仲の良い友達みたいな関係だったけど、それでも十分楽しかった。
付き合って二年ぐらいが経ったある日──。
真央の様子がおかしいことに気づいた。
『なんかあった?』
『え、ううん、なんでもないよ!』
そう言ってたのに──。
たまたま真央が他の男に言い寄られているところを目撃した。
しかもその男は、真央の初恋相手。爽やかなイケメンで、学年でも人気がある男だった。
一瞬頭に血がのぼったけど、ふと冷静になった。
真央の奴、うれしそうな顔してるな。
赤くなって、上目遣いで、俺にも見せたことのないような女の顔をしてる。
そういえば、俺、あいつにグイグイ迫ったことってないかも……。
友達みたいな関係で十分楽しかったから、それでいいと思っていた。
だから恋人っぽいことって、実はほとんどしたことがない。
想像しただけでむず痒いというか、恥ずかしすぎて、手を出すとか無理だった。
あんな顔、するんだ……。
それって、あいつのことがまだ好きだから?
そう考えたらそうとしか思えなくなって、悪いほうへと思考が働く。