斎藤くんは、物事を勝手なイメージで決めつけたりしなくて、ありのままのあたしを見てくれる。
「あ、もしかして、叶ちゃんの父親ってノーアの社長?」
「え? なんで知ってるの? 今は会長だよ」
「俺のオヤジもノーアで働いてるから。ノーアの社名って、社長の名字をもじってつけられたって有名じゃん。青野だから、逆さ読みして真ん中伸ばしてノーア。今気づいた! 俺って、すごくね?」
無邪気に笑う斎藤くんの笑顔に、ほっこり心が和む。
こういうところ、やっぱり好きだな。
「うん、すごいすごい!」
あははと笑いながら、繋がった手が離れないことにうれしさを感じる。
まだ一緒にいたい。
このまま離れたくない。
「それにしても、斎藤くんのお父さんもノーアの社員だなんてすごい偶然だね!」
ノーアとは都心の不動産や大手ホテルやビルを数多く取り扱っていて、主には不動産経営が主。
だけど近年は飲食業界、美容業界、ファッション業界、芸能界などにも幅広く事業展開して急成長を遂げている誰もが知る大手有名企業。
日本のトップの企業といっても過言ではなく、将来的には海外での事業拡大も視野に入れていて、さらなる発展を目論んでいるらしい。