「女の子が、こんなに遅い時間に一人で出歩くなよ」

「ご、ごめん……」

謝るべきなのか。でも、怒ってるっぽいし。一応、ね。

恐る恐る顔を上げると、ムッと唇を尖らせている斎藤くんの顔が目に入る。

「あ、あの、斎藤くん?」

「つーか……その目」

え?

目?

「そんな目で見んなよっ……」

斎藤くんはなぜか、あたしから離れてパッと顔をそらした。

ど、どんな目で見てしまってたんだろう。わからないけど、あからさまに目をそらしたくなるほど変だったってこと?

うう、ヘコむ。

「今度から、遅くなる時は俺に連絡して」

かと思えばそんなことを言ってきて、体温が急激に上昇する。

「とりあえず、叶ちゃんが無事でよかったよ」

そう言って安心したように笑う斎藤くんは、いつもの斎藤くんだ。

「ご、ごめんね、助けてくれてありがとう。あたし、よくあそこでボーッとしてんの。歩道橋からの景色が好きなんだけど、あの人に会うの二回目だし、よく通る道なのかな? 今度からは、控えようかな。また会ったら嫌だし」

あははと軽く笑い飛ばした。

「会うのが二回目……?」

あ、あれ?

なんだか、斎藤くんの笑顔にピキッってヒビが入ったような……。

「前にナンパされてた女の子を助けたことがあってね……そしたら怒って追いかけてきて。女の子と一緒に走って逃げたの。あはは……」

「…………」