トイレの前までくると、行き止まりになっていてそこから先へは進めなかった。

観葉植物が置いてある壁際の長イスに、あたしはストンと座らされる。

斎藤くんは覆いかぶさるようにあたしの目の前に立って、上から見下ろした。

その目つきはなんとなくだけど、真剣だ。

「どこ触られた?」

「え?」

「あいつらに、なにされた?」

なんなんだ、この状況。まるで尋問でもされているかのよう。さらには上から顔を覗きこまれていることに、ドキドキが止まらない。

「な、なにも、されてないよ」

恥ずかしくて、伏し目がちに答えれば。

「ホントかよ?」

さらに厳しい口調で問われた。

「ほ、ホントだよ」

本当になにもされてない。だからそれ以外に言いようがないのに、斎藤くんは納得していなさそう。

「なんであんなところにいたんだよ?」

「え、いや、なんでって」

いつもより口調がキツくて、なんだか斎藤くんじゃないみたい。

いったい、どうしちゃったの?

「いつもこんなに遅い時間まで出歩いてんの?」

遅いといっても、まだ十九時すぎなんだけど……。

なにを言っても納得してくれそうにない斎藤くんに、あたしは首を横に振って答えることしかできない。