差し出された手のひら。あたしは無意識に手を伸ばして、それをつかんだ。グインと引き寄せられて、思わず足がもつれそうになったけど、彼があたしを支えてくれた。

力強く手を握られ、ドキッとする。

「行くぞ」

「う、うん!」

あたしたちは顔を見合わせたあと、同じタイミングで駆け出した。

「おい、待てっ……! こら!」

「おまえ、そっちまわれ! 俺はこっちから行く!」

「おう!」

そんな男たちの会話が聞こえたけど、あたしはただ、引っ張られるがままに走った。

そういえば、前にもこんなことがあったよね。

あの時は金髪男に絡まれていた真央ちゃんを助けて、二人で必死に逃げたんだ。

「はぁはぁ……っ」

同じことを繰り返している。まさか、斎藤くんが助けてくれるなんて思わなかったよ。

繁華街のアーケードの中を全速力で駆け抜けた。

斎藤くんは目についたゲーセンへ飛びこむと、あたしの手を強く引いて奥へ奥へと進んで行く。

その背中はひどく苛立っているようで、どうしてなのか、怒っているように見える。

うしろを確認したけど男たちの姿は見えなくて、どうやらうまく逃げ切ることができたらしい。