「今日は制服だし、余計燃えるわ」

「しかも、かなりの進学校じゃね?」

「マジラッキーじゃん」

「……っ」

心から恐怖を感じると人間って声が出ないらしい。

叫びたいのに、声にならない。ただ、パクパクと金魚のように口を動かす。

その間にズルズルとひと気のないほうへ連れて行かれ、頭の中がパニックになる。

これからされることを考えたら足がガクガク震えて、男たちに「ちっ、ちゃんと歩けよ」と舌打ちされた。

やだ、嫌だよ。

誰か、助けて──。

「触るな」

低い声が聞こえたかと思うと、それはあまりにも一瞬の出来事だった。

「なんだ、おま、うぐっ……」

──ドサッ

あたしの右脇を固めていた男が、地面の上に倒れこんだ。

とっさに振り返ると、そこは暗闇であまりよく見えないけど、たしかに誰かが立っている。

雲が流れていき、満月が現れると、夜の闇の中に姿を現したその人。

今までに見たことがないほど怒ったような表情で、黒いオーラを放っている。

ウソ、でしょ……。

なんで。

「な、なんだ、おまえ! なにやってんだよ!」

左脇にいた男が倒れこんだ男を見て声を荒げた。

あたしはわずかなその隙を狙って、男の腕を振り払う。

「叶ちゃん、こっち!」