「気になる? ルナちんの奴が、あんな言いかたするから」
「そうじゃなくて、見ちゃったの。学校祭の時、元カノさんと一緒にいる斎藤くんの姿を」
「え?」
あたしの言葉に斎藤くんは目を丸くした。
「斎藤くん、笑ってたけどツラそうだった。だから、未練があるのかなって」
真央ちゃんのこと……どう思ってる?
今でも好き……?
「それにね、斎藤くんって、ふとどこか遠くを見つめていることがあって」
他の誰かを想ってる……そんな目をしてることに、気づいてしまった。
「はは、俺がー? 眠いだけだと思うよ」
「…………」
斎藤くんはいつもと同じように笑っていて、なにを考えてるのか全然わからない。
あたしはそんな斎藤くんを見て唇を噛みしめた。
「俺、こんな性格だからさ。笑って、ごまかして、逃げるのが板についちゃってるんだよ」
「…………」
「元カノのことは、叶ちゃんが気にすることじゃないから」
──ズキッ
あたしが気にすることじゃない……。
関係ないって言いたいのかな。
そりゃそうなんだけどさ。
なんだか突き放されたような気がして、ズーンと気持ちが沈んでいく。
「ほら、早く食お? 昼休みが終わっちゃうから。な?」
これ以上なにも言ってほしくなさそうで、その証拠に、斎藤くんは困ったように笑ってる。
逃げたいって、その顔に書いてあった。