もっと俺を、好きになれ。


中学の時の斎藤くんは今よりも幼くて黒髪だった。垢抜けてなくて、真面目な雰囲気。髪の毛も短いし、少年って感じがする。

でもやっぱり、カッコいいな。

今の斎藤くんが形成される前の姿って、かなりレアだよね。

思わずじっと見つめてしまった。

すると、斎藤くんの上に写っていた女の子に自然と目がいく。

『桜沢 真央』

ま、真央ちゃんだ……。

ドクンと鼓動が飛び跳ねる。

カメラ目線ではにかんだように笑う真央ちゃんの笑顔は、とびきりまぶしくて、かわいくて。

斎藤くんとお似合いだなって、思ってしまった。

「わ、この子すごくかわいい!」

「ああ、桜沢さんね。その子はあれだ」

「あれって?」

「斎藤くんの元カノ」

「ええ、めちゃくちゃかわいいんだけど」

「うん、付き合いもすごく長かったよ。二年ぐらいかな? 斎藤くんから告白したらしくて、学校中の憧れのカップルだった」

「ええっ!? ビックリなんだけどー!」

いつの間にか花岡さんのグループも卒アルを覗きこんでいて、みんなできゃあきゃあと盛り上がる。

あたしは自分の顔から笑みが消えていくのを感じた。

笑わなきゃ。そう思って無理やり口角を引き上げる。

そうでもしないと、黒い感情に押しつぶされそうだった。