「今度は叶ちゃんの番」

「え、あたし?」

「俺、何気に叶ちゃんがバスケするとこ見たことないし」

「い、いいよ、あたしは。ヘタくそだもん」

「ほらほら、こっちきて」

有無を言わさない斎藤くんに手招きされて、あたしは渋々コートの中へ。斎藤くんの隣に立つと、彼は満足したように唇の端っこを持ち上げた。

「隅っこの黒いラインを狙うと入りやすいから、がんばって狙ってみ?」

そう言われてゴールの枠の中を見つめる。

「く、黒いライン」

「あそこだよ」

言われた通り、指さされた場所に狙いを定める。

「えいっ!」

そして一気にボールを放った。

だけど──。

ボールは狙いを定めたところではなく、どうやったらそんなところに飛んでいくんだろうっていうほど直角に、真下に、地面に叩きつけられただけだった。

「ぷっ、あはははははっ!」

それを見た斎藤くんがお腹を抱えて大笑いし始める。

「て、手が滑っただけだもんっ! 次はうまく決める!」

だけどいくらやってもダメだった。まず腕力がなさすぎて、ボールがゴールに届いてすらいない。