それとも、本当に真央ちゃんのことは悩んでないのかな。
わからない……。
「叶ちゃんも、なにかあるなら俺に言って」
「あ……うん。ないよ、なにも」
言いたいことはいっぱいある。でも言えない。言わないほうがいい。知らずにいたほうがいいことも、きっとある。
聞いてしまったら、斎藤くんの前でうまく笑えなくなる。そんな気がするの。
だから湧き上がる本当の気持ちにはフタをして、斎藤くんに合わせて笑う。今この瞬間が楽しければそれでいい。
未来のことも過去のことも、そんなことは考えたくない。
「本当かよ? なーんか、この間から様子がおかしい気がするんだけどな」
「あは……疲れてるだけだよ!」
「そう? 俺の勘違いならいいんだけどさ」
「…………」
なにも言い返せなかった。
本当はあるんだよ、言いたいことが、聞きたいことが。
押し黙ったままでいると、斎藤くんは再び口を開いた。その表情は優しくて、あたしの大好きな斎藤くんの顔だ。
「これから行きたいとこがあるんだけど付き合ってくれる?」
「行きたいところ……?」
疑問に思いながらもうんと頷く。そして連れて行かれた場所は、歩いて十分ぐらいのところにある公園だった。
「この公園、学校からも近いだろ? 部活がない日は、バスケ部の奴らとここでバスケしてるんだ」
そこにはバスケットコートがあって、斎藤くんは隅っこに落ちていたボール目がけて走って行く。
そしてボールを手に戻ってくると、両手を上げてバスケットゴールに狙いを定める。
きれいなフォームで放ったボールは、ゴールに吸いこまれるようにして落ちていった。
──ザッ
「わぁ、すごーい!」



