──ガチャ

「お待たせ」

偶然とはいえメッセージを覗き見してしまったことや真央ちゃんのことが後ろめたくて、あたしは肩を震わせた。

どんな顔で斎藤くんと接すればいいのか、それもわからない。

「叶ちゃん」

名前を呼ばれて斎藤くんを見ると、目の前に温かそうな湯気が出ているマグカップを差し出された。

黒のスウェットにグレーのTシャツ姿の斎藤くんは、首から下げたタオルで耳の横を拭いている。

「ゆず茶なんだけど、飲める?」

「あ、うん……ありがとう」

あたしが寒いと思って温かい飲み物を用意してくれるなんて。

真央ちゃんのことがなかったら、浮かれて舞い上がってこの状況にも素直に幸せを感じることができたはず。

でも今は、なにを考えてるかわからない斎藤くんの反応を見るのが怖い。

動揺を隠すためにマグカップを手に取り、ゆず茶を飲んだ。ゆずの甘酸っぱい味が口の中に広がって、とても美味しい。

「シャワー浴びたら暖まったー。叶ちゃんも入る?」

「い、いいよ、あたしはそんなに濡れてないから」

「はは、冗談だって」

あたしの向かい側に座って何気なくスマホを手にした斎藤くんの顔から目が離せない。