もっと俺を、好きになれ。


斎藤くんの家は十五階建てのマンションの八階だった。

エレベーターに乗ってる間からドキドキして心臓が口から飛び出しそうになり、廊下を歩いていると激しい動悸がした。

このまま心臓が持つかはあたしにも謎。

「ど、どうしよ、あたし、手土産とかなにも持ってきてないっ!」

色々考えてたら、そこまで頭が回らなかった。

曲がりなりにも初めてお邪魔するお宅なのだ。手土産を持ってないとか、あたしの親が知ったらまちがいなく怒るだろう。

「ぷっ、いいよ、そんなの。急な出来事だったし。それに、誰もいないから」

振り返って安心させるようにニッコリ微笑む斎藤くん。

「えっ!」

だ、誰もいない?

そのことにまた緊張感が増してくる。

「叶ちゃんって律儀というか、礼儀正しいよな。マジで気にしなくていいから」

「う……」

手土産のことはいいとしても、誰もいない家に上がりこんでいいものなのかな。

「どうぞ」

「あ、えと」

「ん?」

「ううん、なんでもない。お、お邪魔します……!」

ペコッとお辞儀をしてから、斎藤くんのあとに続いてゆっくりと中に入る。

「俺の部屋ここなんだ」

玄関を入ってすぐのところにある部屋に案内されて、ドギマギしながら足を踏み入れた。

八畳ほどの広さで、ベッドと勉強机、その上にはノートパソコン。本棚には漫画がぎっしりで、ベッドの頭元にも漫画が置いてあった。

あとはテレビとウォールナットのローテーブル。

斎藤くんはタオルを渡してくれて、とりあえずあたしは濡れていた靴下を脱いで足を拭いた。