もっと俺を、好きになれ。


ど、どうしよう。

「はは、濡れたから着替えたいんだけどダメ? 俺、まだ叶ちゃんと一緒にいたい。着替えてから、また外に出てもいいし」

「え、あ」

なんだ、そういうこと……?

そりゃあそうだよ、着替えたいよね。

それなのに、あたしったらなにを緊張しちゃってるの。

家という特別な場所に行くというだけで、一瞬でも変なことを想像しちゃった自分が恥ずかしい。

「風邪引いたら困るから、早く着替えに行こっ」

「はは、うん。じゃあ、傘かして」

「あ」

あたしが手にしていた傘を斎藤くんが奪うと、それを広げて一歩前に踏み出す。

「しかし、よく降るよなぁ」

そんなことを言いながら空を見上げて、くしゃりと笑った。

その目はどこか遠くを見ているように思えて、なんだかキリッと胸が痛んだ。

今、なにを考えてるの?

「じゃあ、行こっか」

そう言い、斎藤くんはあたしの腕を引いて歩き出す。

そ、そうだよ、斎藤くんは傘を持ってないんだから一緒に入るのは当然のことで、そんなことを考えてもいなかったあたしは、突然の行動に思わずドキッとする。

隣に並んで歩くと、近すぎるその距離にドキドキしっぱなしで。

恥ずかしくて、無意識に肩が触れないように端っこのほうを歩いていると──。

「濡れるだろ。もうちょい、こっち寄って」