もっと俺を、好きになれ。


五分ほど経った時、小走りでやってくる斎藤くんの姿が見えた。

傘はさしておらず、ずぶ濡れの状態だ。

「ごめん、お待たせ」

あたしがいるところまできた斎藤くんは、髪の毛から雨の雫がポタポタと滴り落ちるほど濡れていた。

「だ、大丈夫? 傘、持ってなかったの?」

「いや、持ってたけど……困ってた奴がいたから、そいつにかした」

斎藤くんはカバンの中からタオルを取り出し、わしゃわしゃと髪の毛を拭く。濡れた髪がとても色っぽくて、いつも以上になんだか男っぽく見える。

困ってる人に傘をかすなんて、斎藤くんらしいといえばそう。

こんなに雨が降ってるのに、傘がなくて困ったよね。

よく見ると、斎藤くんの身体が小さく震えている。

六月といえど、雨が降っているとやっぱりひんやりする。

「大丈夫? 風邪引かないように、早く帰ったほうがいいね」

「うん、だから、叶ちゃんも俺んちくる?」

「え?」

しれっとそんなことを言ってのけた斎藤くんの顔を、穴が開くほど見つめた。

そんなあたしに、ふわりと笑う斎藤くん。

濡れ髪で、その甘い笑顔は……ダメだよ。

「そんなにビックリしなくても」

「いや、だって……」

斎藤くんの家とか……。