え?
真央、ちゃん?
二人が一緒にいるところを見て、自然と足が止まった。
聞こえてくる二人の会話に全神経が研ぎ澄まされて、やけにリアルにクリアに聞こえた。
『前みたいに仲良くしたくて』
『友達から始めてもらえないかな?』
『後悔してたの、コジローくんと別れたこと』
『無理だろ、そんなの』
──ドクンドクン
なに、今の会話。
二人が知り合いだったことに衝撃を隠せない。
でも、それよりもさっきの会話。
え、待って。ホントにわけがわからない。
なんで?
ううん、ホントは薄々わかってる……。
ただその可能性を考えたくないだけ。
浮かんでくる二人の可能性に、頭が真っ白になっていく。
激しい動悸がして、信じられない気持ちでいっぱいで、これ以上考えるのを脳が拒否している。
ダメだ、頭がおかしくなりそうだよ。
あのあと──。
あたしは空き教室から立ち去った斎藤くんの後を、しばらくしてから追いかけた。
だってあのままじゃ納得なんかできなくて、斎藤くんの口からちゃんと聞きたかった。
『仲良くチョコバナナなんか食ってんじゃねーよ』
『俺、こんなこと言ったの初めてだよ』
『叶ちゃんといると調子狂う』
どういうつもりで、あんなことを言ったのか。
斎藤くんの本音が知りたかった。
だからあたしは、体育館の横のドアからこっそり中を覗いてたんだ。
バスケをしている斎藤くんは、いつもなら女の子に笑顔で手を振ったりとファンサービスが旺盛なのに、今日はとても真剣に脇目も振らずにボールを追いかけていて、なんだかいつもとはちがっていた。