過去のことは水に流そうってか?
もうあの頃みたいに無邪気に笑えない。
俺はそこまで強くないんだ。
変わったんだよ、俺も、おまえも。
だから──。
「用がないなら、もう行くから」
だってこれ以上、話すことなんてなにもない。
俺たちはたしかに、あの日に終わったんだ。
「え、あ、待って!」
「…………」
引き止められてゆっくり振り返り、そいつの目を見つめる。
きれいに澄んだその目はあの日のままだ。
中学の時とはちがうセーラー服を着て、髪が伸び、少しだけ、大人っぽくなった。
そりゃそうか、中学を卒業してから二年以上経ってるもんな。
「あ、あたしね、コジローくんとまた前みたいに仲良くしたくて……っ!」
仲良くって……。
「もう一度、友達から始めてもらえないかな?」
「…………」
「後悔してたの、ずっと。コジローくんと別れたこと。だから……」
「……だろ」
「え?」
「無理だろ、そんなの」
なに考えてんだよ。
わけ、わかんねーよ。
「…………」
「じゃあな」
背を向けて歩き出す。
「あ、真央!」
遠くから友達だと思われるセーラー服の女が走ってきて、あいつの名前を呼んだ。
「もう! こんなところにいたのー?」
「あ、ごめん……!」
「早くあっち行こー!」
俺は振り返ることなく、その場から立ち去った。