「ごめんね」

涙目になる他校の女子にニッコリ笑ってみせる。深刻な顔をするより、笑顔でやんわり断るほうが、気分的にも、見栄えも、後味もいい。

「あ、あたしこそ、知らずにごめんなさいっ。それじゃあ!」

真っ赤な顔でペコッと一礼してから、走り去る女子高生。周りにいたたくさんの女たちも、俺が差し入れを受け取らなかったのを見て躊躇している。

いつもなら必ず受け取ってたし、むしろ、今は腹が減ってるから、なんでも食いたい。

それなのに、なぜだか受け取る気になれなかった。愛想笑いを浮かべるのも面倒で、誰とも目が合わないように体育館を出る。

すると──。

自販機に持たれかかるようにして他校の女、セーラー服を着たそいつが立っていた。

風になびいて揺れる茶髪のゆるふわヘア。セーラー服のスカーフが横にはためいている。

目が合った瞬間、まるで時が止まったかのように身動きができなくなった。

──ドクンドクン

やけにリアルに弾む鼓動。激しい動悸がしてきて、うまく息が吸えない。

そいつはゆっくり歩いて俺の目の前までくると、あの時と変わらない笑顔を見せた。

「あ、えと、久しぶり」