バスケ部の催し物といっても、実際にはただバスケをするだけのものだった。
遊びにきている一般のお客さんや、高校受験を控えた中学生が俺らバスケ部メンバーの中に混ざってプレイする。
ただのバスケだけど毎年かなり人気の高い催し物で、これを目当てにくる人も少なくない。
チーム分けがなされ、整列し向かい合ってお辞儀する。
──ピーッ
試合開始のホイッスルとともに、ボール目がけて自然と身体が動く。
俺はなにかを吹っ切るように、ただひたすらボールを追いかけた。
額から汗が流れ落ち、髪をかきあげると、キラキラと飛び散る雫たち。
「なにあれ、ヤバいッ」
「コジローくん、カッコよすぎるよ〜!」
体育館の中にはたくさんのギャラリーがいて、そのほとんどが他校の女子だ。
「虎く〜ん! コジローく〜ん!」
「神レベルのカッコよさだよ!」
「部活男子、よき〜!」
「甚平姿、めちゃくちゃそそるんだけど!」
「ああ、あの腕に抱きしめられたい……!」
いつもよりもギャラリーの女が白熱している。
いつもなら笑顔で手を振り返しているところだが、今日はそんな気分になれない。
脇目も振らずにボールだけを見て、ゴール目がけてシュートを放った。
──シュッ
「きゃああああ!」
「ヤバ〜い!!」
ボールが一気に吸いこまれるようにして、きれいなシュートが決まった。さっきまでとは比べ物にならないほどの、悲鳴に近い雄叫びが聞こえる。
「コジロー、ナイッシュー!」
「やったな!」