ヤバい、マジで。

なんなんだよ、いったい。笑えない、マジで。

なにやってんだ、俺は。

なんだか色々とやってしまった気がする。

はは、ダセー……。

中庭にいる伊藤と叶ちゃんの姿を見つけて、ついムカついて衝動的に水とスーパーボールを落とすとか……。

子どもかよ。

ああ!

くそっ。

走りながら俺は頭を抱えた。

うー、あー、うー!

余裕だと思ってた。全然大丈夫だって。

でもなぜか、俺はおかしい。

叶ちゃんが相手だと一ミリも余裕がなくなる。なんでだよ、意味がわからない。

髪をかきむしった手をポケットに突っ込んで、足早に体育館へと向かう。

さっきのことは忘れよう、とにかく忘れるしかない。

それが一番だ。

「おーい、コジロー!」

「こっちこっち!」

風を通すために開けられた体育館のサイドのドアから、ヒョイと中に入る。

やべ、俺、甚平のままだ。

みんな体操服なのに、俺だけ甚平とか恥ずい。

「斎藤ー、おまえ、体操服集合だって言っただろ」

中年の顧問の先生が呆れ顔を浮かべる。

「着替える暇もないぐらい忙しかったんだって! いいじゃん、俺、この甚平気に入ってるし!」

「そういう問題じゃない。まったく、おまえは」

「はは、許してよ」

先生の声をスルーして、バスケ部の連中が集まる輪の中に加わる。みんないい連中ばかりで、虎を中心にワイワイ騒がしい。