もっと俺を、好きになれ。


もうホント、恥ずかしくて無理だから。

「さ、斎藤くん……」

我慢できなくて斎藤くんの胸を押し返した。そして、少し距離を取る。

だってこの至近距離には、どうやったって耐えられない。あたしにはハードルが高すぎる難問だよ。斎藤くんに背を向けて、自分の左胸に手を当てる。

わ、ものすごくドキドキしてる。

あたしの心臓、よく耐えたな。

「なんだ、そんなことかよー。叶ちゃん、慌てて教室出てくから、何事かと思っただろー」

え?

そんな、こと?

あたしにとっては、そんなことで片付けられるほど簡単じゃないんだけどな。

「マジでビックリしたー。はは」

胸にひんやりとした空気が流れるこむのを感じて、あたしは拳をグッと握りしめた。

ヒリヒリと胸が痛い。

好きなのは、あたしだけ──。

そう、あたしだけ。

だからこんなに温度差があるんだよね。斎藤くんはいつもニコニコして、余裕たっぷりで、どんなことにも動じない。

斎藤くんを焦らせたり、余裕をなくさせたり、本気にさせることができるのは、あたしじゃダメなんだ……。

それって……ツラい。

「あ、これ、たくさん差し入れもらったんだけど、一緒に食おうぜ」

「……いらない」

「え、腹減ってないの?」

「…………」