ど、どうしよう……。
「叶ちゃん」
一歩ずつゆっくりと斎藤くんがあたしのそばまでやってくる。
斎藤くんの黒いクロックスと、あたしのピンクのクロックスのつま先がトンッとぶつかった。
「顔、上げて?」
「え、あ……」
顎をグイッと持ち上げられ、強引に上を向かされる。
わぁ、斎藤くんの顔がめちゃくちゃ近い。
ど、どうして、こんなことになっているんだろう……。
目の前にある斎藤くんの整った顔には色気がたっぷりで、あたしは身動きができなくなってしまった。
触れているところがものすごく熱くて、そこから熱が伝わってジンジンする。
力強い眼差しと、真剣な表情。こんなに熱っぽい斎藤くんを見るのは、初めてだ。
キュンキュンを通りこして、心臓が破裂しちゃいそうだよ。
「はぁ」
熱い吐息が耳元で聞こえてゾクリとした。
ダメだ、こんなに男っぽい斎藤くんは……あたしの身が持たないよ。
「あ、あの……あたし……っ」
「なんか隠してるって顔してる」
「え?」
「なんかあるなら、ちゃんと言って?」
両手首をつかまれて、ますます近くなる斎藤くんとの距離。思わず後ずさると、壁に背中がくっついた。
「あ、あの……」
斎藤、くん?
「言ってくんないと、わかんないしさ」



