もっと俺を、好きになれ。


はぁ、切ない。

さっきから校内をたくさんのカップルが歩いていて、みんな楽しそうに笑っている。

きっと幸せなんだろうな。

「ねぇ、コジローくん! このあとフリーでしょ? あたしたちと一緒に回らない?」

同じクラスの花岡さんが斎藤くんに声をかける。

「俺と?」

「そう、みんなで一緒に回ろうよ」

「うーん」

「お願い」

花岡さんは甚平の袖を脇までめくって、着こなしもすごくかわいくておしゃれ。

さり気なく斎藤くんの腕に触れて、上目遣いで女子力も高め。あたしは二人を見ていたくなくて、パッと目をそらした。

一瞬だけ斎藤くんと目が合ったような気がしたけど、胸が苦しくてそれどころじゃない。

嫌だ……嫌だよ。

でも、あたしにそんなことを言う資格はない。

そばにいられるだけでいいって思っていたけど、やっぱりこんな光景を見せつけられるのはツラいや。

教室を出ふと人にぶつかりそうになり「すみません」と頭を下げる。

はぁ……なにをやってるんだろう。なにがしたいんだろう、あたしは。

四階へと上がる階段をのぼって、何気なく廊下を歩いた。

するとたまたま空いている空き教室を見つけて、そこへ身をひそめた。