そうだよね、部活だよね。

日誌を書くのはあたしの仕事だし、それ以外のこと……黒板を消したり、授業の号令だったり、他のことは全部斎藤くんがしてくれたんだもん。

日誌の欄もあとは『今日あったうれしい出来事』を記入して終わりだ。

よし、早く書いて帰ろう。

『今日あったうれしい出来事』

「う、うーん……」

うれしい出来事……うれしい出来事。

なにかあるかな。思い浮かばないんだけど。

「んー……」

ど、どうしよう。他のことはスラスラ書けるのに、こういうことを書くのはすごく苦手。

うーん、なにかあるかな、なにか。

あ、そういえば、ひとつだけ……ある、かも。

「うれしい出来事、それは……斎藤くんが……彼女と別れました」

あはは、なんちゃって……。

こんなこと書けるわけないし。

思わず声に出してなにを言ってるんだ、あたしは。こんなことを言うキャラじゃないのに、斎藤くんのことになると、どうも調子が狂ってしまう。

あはは……笑っちゃうよね。

──ガタッ

その時、教室の後ろのドアから人の気配がした。

えっ……?

ま、まさか。

恐る恐る振り返ると、そこには──。

「さ、斎藤くんっ……!」