彼は、海外でも有名なほど大きな会社の一人息子。親が厳しいらしく、朝から夜中までギッシリと予定がつめられていた。


あたしと宏輝が会うことを許されたのは、放課後のこの時間。詳しく言うと、学校が終わる4時40分から、宏輝の塾の迎えが来る4時45分までの時間。


会話はそれ以外のメールでしかできなかった。


一人で帰るいつもの道の隣に宏輝が居てくれたら・・・なんて、できそうで叶えられない夢だった――。


「礼菜ー。待って!!今日ケーキバイキング行かない?半額なんだって☆」


「行く!【Maria】のケーキでしょ?」

あたしにこの話を持ちかけてくれたのは、中等部から一緒の由麻。