後ろには、長い金髪を一つにまとめた背の高いきれいな女の子。片手にぞうきんを持ち、もう片方の手は腰に当て、怖い笑みを浮かべている。

「私は掃除をしてって頼んだのよ。何をサボっているの?」

ニコニコと笑いながら女の子は凛に言う。凛は心の中で絶叫しながら、「Es tut mir leid(ごめんなさい)」と謝る。サボっていたのは事実なので、言い訳はできない。言い訳をすれば、さらに痛い思いをする。

「全く……。あなたといると、自分が嫌でもしっかりしちゃう」

そう言う女の子に、凛は「ごめんね?」と言いながら抱きつく。

「全くもう……」

女の子は凛の頭をそっと撫でる。その手はさっきとは違い、とても優しいものだった。



凛は幼い頃からずっと、ドイツに留学したい、住んでみたいと思っていた。なぜ、そんなことを思い始めたのかはわからない。ただ、いつのまにかそう思うようになっていた。

大学生の時、凛は念願だったドイツ留学をすることになった。留学すると決まった時には、興奮して一晩眠れなかったほどだ。