「……私は、人々から恐れられ、蔑まれ、真実を隠して生きていくしかなかった。同じ街にずっと住むことはできず、森の中で独りで暮らしていた時代もある。男として戦場に立ち、兵士として戦った時もある」

リーゼロッテの目から涙がこぼれる。リーゼロッテは長く生きてきた。だからこそ、嫌なものもたくさん見てきた。人の汚さや愚かさ、リーゼロッテにとって傷ついたことはたくさんあっただろう。

「たくさんの争いも見てきた。二度の世界大戦も経験した。ベルリンの壁も見た。……友達ができては、失った」

凛は、優しくリーゼロッテを抱きしめる。それだけの重いものを、たった一人で抱えていたのだ。人に話せば、その人はリーゼロッテを恐れて去って行く。一人で抱えるしか道はなかったのだ。

「Ich danke lhnen fur die wahrheit.(真実を話してくれてありがとう)Ich muss nicht mehr leiden.(もう苦しまなくていいんだよ)」

凛は優しくリーゼロッテに言う。リーゼロッテの目からは、ますます涙があふれて流れていった。凛の目からも涙があふれる。