すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「悪いな、邪魔して……じゃあ、またな」

「ああ、また」

そう言い合って男性達が歩きだ、藍里の近くを通る瞬間、とても小さな声が聞こえた。

ーー本当に、ごめん。

その言葉がちゃんと心からの言葉なのだと分かるけれど、素直に受け入れられないほど藍里は長年身近な男性に傷つけられすぎていた。
唇を引き結んで床の一点を見つめ続け、後ろの方で、実は中学の時に……。と言う声を聞いていたらふと床に影が射した。

「行くぞ」

まだあるんだろ、買い物。と智大に言われ、藍里は顔を上げることなく頷いた。

足取りはさっきよりもとても重く、暫くこのショッピングモールには来ないでおこうと心に決めた藍里は智大の後ろをゆっくり着いていった。



モールから離れ、家の近くのスーパーでも買い物をし、後行くところはないか聞かれたので、銀行に行っておきたいと告げた。

次の給料日までまだ日があるからだろうか、銀行にいる人はあまり多くなく閑散としていて、どこかのんびりとした雰囲気が漂っていた。

藍里がお金を下ろしている間、智大は邪魔にならないよう壁際で立ったまま待っていた。
財布にお金を仕舞いバッグに入れ、智大の元へ向かおうとした時にどこからかパァンと衝撃音が響き渡り足を止めた。