すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

夜も遅くなった頃に残業だった智大が帰ってきたので、藍里は昼間の出来事を話した。
心配をかけたくないので吉嶺と汐見の言い争いを間近で見て倒れてしまったというのは内緒にし、汐見が智大の為にたくさんの食材を買ってきてくれたことを伝えると、智大が微妙な顔をしていた。

「何がしたいんだ、あいつは」

「きっと大好きな智君の役に立ちたいだけなんだよ」

やはり汐見の智大に対する言動は、吉嶺の藍里に対する盲目的な言動と似たところがある。
そして藍里に対してぶっきらぼうで素直でない言葉を使うのと、表情を崩さないために冷たい印象を与えるような鋭い目つきになるところは智大に似ている。

智大の言動の裏の意味を理解できる今だからこそ、汐見の藍里に対する言動は恐怖だけでなく、素直になれない不器用な人という認識を持って接することが出来るのだと、そう智大に説明すると智大は何とも言えないばつの悪そうな顔をした。

「俺はそこまで不器用だったわけじゃ……」

そう呟く智大を無言で見ていたら智大は、うっ……。と声をつまらせて、悪かった。と頭を下げた。

「ふふっ、怒ってないから大丈夫。昔は……やっぱり怖くて辛くて悲しかったけど……今が幸せだからいいの」

「藍里……」

藍里の言葉に柔らかい表情を浮かべた智大にそっと抱きしめられ、藍里は微笑みながらぎゅっと抱き返した。