「こ、困ります……こんな……っ」
「煩い。つべこべ言わずに受け取れ」
あの後、会話もなく汐見に家に送り届けられた藍里はソファーで休憩していたところインターホンの音が鳴り、モニターを確認した。
そこには先程別れたばかりの汐見が立っていて、恐る恐る対応すると袋一杯の食材を二袋も押し付けられて困惑した。
「こ、こんなことされる謂れは……」
「あれだけの少ない食材で先輩の健康が保たれると思うな。言っとくけど、あんたの為じゃなくて全部先輩の為だからな」
ぶっきらぼうな言い方をしながら、グイグイと荷物を押し付けられる。
それでも頑なに受け取ろうとしなかったら何を思ったのか、汐見は藍里に荷物を押し付けたままパッと手を離した。
重力に負けて落ちそうになる袋を慌てて掴むと、満足した様子の汐見がもう一袋を藍里の足元に置いた。
「それ、絶対ちゃんと料理して食べてもらえよ。……特別にあんたが食べることも許してやる」
「え……ちょっ……」
「あと……男性恐怖症だって嘘ついたんじゃないかって言ったこと、悪かったな」
顔を上げずにそれだけ言うと、汐見は走って去っていってしまった。
残された藍里は手に持っていた荷物と下に置かれた荷物に視線を向け、隙間から見える大量の野菜や肉、魚を見て眉を下げた。
「……本当に智君のこと慕ってるのね……」
隣に立つのを認めていないと言いきった人間に託してまで、ここまでする部下は多分いないだろう。
それほど慕われてる智大を藍里は誇らしくさえ思えた。
「煩い。つべこべ言わずに受け取れ」
あの後、会話もなく汐見に家に送り届けられた藍里はソファーで休憩していたところインターホンの音が鳴り、モニターを確認した。
そこには先程別れたばかりの汐見が立っていて、恐る恐る対応すると袋一杯の食材を二袋も押し付けられて困惑した。
「こ、こんなことされる謂れは……」
「あれだけの少ない食材で先輩の健康が保たれると思うな。言っとくけど、あんたの為じゃなくて全部先輩の為だからな」
ぶっきらぼうな言い方をしながら、グイグイと荷物を押し付けられる。
それでも頑なに受け取ろうとしなかったら何を思ったのか、汐見は藍里に荷物を押し付けたままパッと手を離した。
重力に負けて落ちそうになる袋を慌てて掴むと、満足した様子の汐見がもう一袋を藍里の足元に置いた。
「それ、絶対ちゃんと料理して食べてもらえよ。……特別にあんたが食べることも許してやる」
「え……ちょっ……」
「あと……男性恐怖症だって嘘ついたんじゃないかって言ったこと、悪かったな」
顔を上げずにそれだけ言うと、汐見は走って去っていってしまった。
残された藍里は手に持っていた荷物と下に置かれた荷物に視線を向け、隙間から見える大量の野菜や肉、魚を見て眉を下げた。
「……本当に智君のこと慕ってるのね……」
隣に立つのを認めていないと言いきった人間に託してまで、ここまでする部下は多分いないだろう。
それほど慕われてる智大を藍里は誇らしくさえ思えた。



