すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「だからっ、先に喧嘩ふっかけてきたのはそっちだろ！？」

「それを買って言い返す方も悪いんだ！」

どこからか騒がしい声が聞こえてきて、藍里は目を覚ました。
横向きに寝かされていたからか、最初に目に入ったのは見覚えがあるようなないような壁だった。

聞こえてくる声は、さっき公園で言い争っていたはずの吉嶺と汐見。
そして……。

「いい加減にしろっ！！一般市民の、しかも臨月近い妊婦を倒れさせといてまだ続ける気か！？それでも市民の安全と平和を守る、警察の人間かっ！！」

ドンッ！！と何かを叩きつける音と怒鳴り声に、藍里は小さく悲鳴をあげてビクッと体を跳ねさせた。
藍里の記憶が正しければ怒鳴っていた声の人物は……。

「……ああ、やっぱりお目覚めでしたか……。騒がしくしてすみませんでした」

「い、いえ……大丈夫、です……」

ドアが少しだけ開き顔を出したのは、さっき怒鳴っていたはずの松浦。
目覚めた藍里に対して、とても申し訳なさそうな表情をする松浦に、藍里は顔をひきつらせながら何とか首を横に振った。

そしてここが、一度運ばれたことのある交番の仮眠室だということを瞬時に察したのだった。