すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「い、たた……」

スーパーでの帰り道、藍里は腰に痛みを感じていつもの公園のベンチに座って一休みすることにした。
かなり大きくなったお腹は下を向いても地面が見えなくなるほどで、職場の常連の人など顔見知りの人に出会えば、双子！？と勘違いされることも多かった。

そんな大きなお腹を抱えて歩いていたら腰が痛くなるのも当然で、藍里は、ふぅ……。と息を吐くとそっとお腹に触れた。

智大が赤ちゃんに話しかけてからというもの、痛みを伴うほど激しく動くのは智大がいる時だけになったと気付いたのはつい最近だった。
藍里が一人の時は優しく動いてくれるのに、智大が近くにいると激しく動き、智大がお腹に触れて話しかけて大人しくなる。というのを繰り返している。

「もしかして……お父さんのことが好きなのかな……？」

声が好きとか？それとも、あの大きな手でお腹を撫でられたりするのが好き？と呟いてみれば返事をするようにポコンと蹴られた。

相手をしてほしくて必死にアピールしているのかもしれない。
もしそうなら、生まれた時にはもうお父さんっ子になっていそうだ。

そう思って仲良く遊んでいる智大と赤ちゃんを想像し、少しだけ微笑むと同時に少しだけ妬けてしまった。

「……お父さんはお母さんのだからね？あんまり独り占めしないで、私にも返してね？それから……私とも仲良くしてね？」

そう語りかけてみるが、赤ちゃんは全く動かなくなってしまった。
それが返事なのか、それともたまたま眠ってしまったのか。

少しだけ藍里が気落ちしているとふと陰り、上を見上げたら真横に人が立っていたのに気付いて驚きに目を見開いた。