すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「すごい……動きがゆっくりになってくれた……。やっぱり智君の声が聞こえてるのかな?」

「そうかもしれないな」

「元気で聞き分けが出来る良い子……早く会いたいな……」

「もう少しだな……。動かなくなったな、寝たか?」

智大が撫でていた手を止めるのに合わせて、藍里もお腹に集中する。
さっきまでの元気さが嘘のように静かになったお腹の赤ちゃんは、智大が言うように眠ってしまったのかもしれない。

「そうかも……暴れて疲れたのかな?」

「藍里も眠れるなら今のうちに寝ておけよ?またいつ暴れだすか分からないからな」

「うん……じゃあ、眠るまでこうしていてくれる?」

智大の腕に手を添わせ請うように言ってみれば、智大は目を細めて微笑みながら頷いた。

「藍里が寝たら家のことはやっておくから、ゆっくり休んでろ」

「ん……いつもごめんね?ありがとう……」

「気にするな、好きでやってる」

「うん……」

耳元で聞こえる声に藍里は体の力を抜くと、ゆっくり目を閉じた。
夜中もたまにお腹の痛みで目を覚ましてしまうことのある藍里は、自分でも気付かないうちに寝不足になっていたのか、智大の香りと温もりに包まれているとすぐに睡魔が襲ってきて眠りにつくのはとても早かった。

藍里が眠った後、様子を伺うようにお腹がポコッと動き、その度に智大が小声で、もう少し待ってろ。ゆっくり寝かせてやれ。とお腹を撫でて言い聞かせるということを繰り返していたのだが、ぐっすり眠っていた藍里はその事を知るよしもなかった。