すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「っ……おい、お前、甘えるなっ！先輩に似合う人は、もっと凛として格好良い人なんだ……っ！」

「いい加減にしろよ、汐見。他でもない永瀬が嫁さんを選んだんだ。他人がとやかく言うもんじゃない」

尚も喚く汐見に室山が鋭い目付きで嗜める。
続いて入江も、第一……。と口を開いた。

「男が荷物を持つって当然じゃないか？奥さんは妊婦だぞ？重い物持たせる方が先輩らしくないし、どうかと思うけど」

「う……」

先輩である二人に相次いで言い返され、汐見は目に見えてしょんぼりと項垂れていた。
その様子を見ていた藍里は、手を伸ばして智大の腕にぎゅっと抱きついた。

「藍里？」

「っ……！？お前、先輩から離れろっ！」

「……嫌、です……」

怒鳴られて若干怯えて声を震わせながらもしっかりと拒否の意を示すと、全員が驚きに目を丸くした。
さらに腕に抱きつく力を強めると、藍里は小さく深呼吸して汐見をじっと見返した。

「主人は私ので、私は主人のものです。誰かに似合わないって言われても……主人が私を愛してくれる限り、私は主人から離れません……っ！」

きっぱりとそう言うと、全員が目を見開いた。
男性恐怖症の藍里が男である汐見に言い返すなどとは思ってもいなかったのだろう。
小さく震えながら汐見を見ていると、汐見はわなわなと震え、そしてテーブルを両手で叩いた。