すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「嫉妬なんかしてないです。ただ、ショッピングモールで先輩にばかり荷物持たせたり何か言い合ってたりして、仲良さそうになんて見えなかったから……先輩が弱味でも握られて嫌々結婚させられたのかと……。
それなら先輩が可哀想だから、早く別れてほしいと思っただけです」

「あれは言い合いじゃない」

汐見の言葉を即座に否定した智大の隣で藍里は何のことだろうと考えていると、智大は小さく溜め息をついた。

「この前、マタニティウェアを買いに行っただろ？その帰りに俺が冗談半分に藍里をからかっていたのをどこかで見てたんだよ」

「あ、あの時……」

藍里に必要かもしれない物は何でも買ってあげたいと言う智大に、勝手に買ってきたら駄目だと必死に説得していた藍里。
確かに傍から見れば言い合っているようにも見えたかもしれないが、その現場に汐見がいたことに藍里は目を丸くした。

「さすが先輩、気付いていらしたんですか？」

「気配で分かる。こいつがいたから、こっちから話しかけはしなかったがな」

智大は目を輝かせ尊敬の眼差しを送る汐見を一瞥してから、ゆっくりと藍里の頭を撫でる。
藍里は智大の優しい手つきに目を閉じてうっとりしていた。