すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「……何で……何で永瀬先輩ほどの方の奥さんが、こんな頼りない人なんですか……」

「「「は?」」」

汐見の言葉に智大と室山、入江の声が重なった。
その怒りを含んだ低い声に藍里がビクッと反応すると、汐見が鋭い眼差しで睨み付けてきた。

「ほら、今もビクビクして!永瀬先輩みたいな勇敢な方にこんな人、絶対似合わないですっ!」

ガタンッと大きな音を立てて立ち上がる汐見に藍里はさらに怯え、嫌な音を立て始めた心臓を服の上から押さえつけた。

「おい、汐見。お前、人様の嫁に何言ってんだ?そんなこと言うために今日ついてきたのか?」

明らかに怒っている室山も怖くて、藍里は誰かが話したり動いたりする度に怯える。
指が白くなるほど力を入れて手を握っていると、智大がその手を上から掴んできて思わずビクッと反応した。

「顔色が悪い。寝室に行って休むか?」

眉を下げ、心配そうに顔を覗きこんだ智大に藍里はハッと我に返った。

恐る恐る三人の顔を見回せば、眉を釣り上げ憤慨している様子の室山。
眉を下げ、申し訳なさそうにしている入江。
ぶすっとした顔で明後日の方向を向き、不満そうな顔をしている汐見がいて、いつの間にか話が終わっていたことにやっと気付いた。