すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「どうしたの?」

「いや、生き生きしていて楽しそうだと思っただけだ」

「生き生き……は分からないけど、すごく楽しい」

満面の笑みを浮かべて頷いた藍里の頭を智大が撫でると、どちらからともなく手を繋いで歩きだした。

新生児用の肌着を見たり、哺乳瓶を見たり。
結局その日にベビー用品は何も買わなかったけれど、赤ちゃんがやって来るのだという自覚はやっと芽生えた。

その後に隣のフロアにあったマタニティ用の売り場に行った時は、妊娠中や産後にあれも必要、これも必要と言われ思ったよりもたくさん買った。
服は約束通り智大が選んだのを数着買って満足した藍里は、片手でたくさんの荷物を持っている智大をじっと見つめた。

「あの……私のばかりたくさん買ってごめんね?」

「謝ることはないだろ。必要だと言ってたし、他のも後から必要だと感じればその時に買えばいいとちゃんとアドバイスも貰って買ってない物もある。
不要な買い物はしてないだろ?」

「それは……そうだけど……」

「俺は、藍里に必要なら何でも買ってやりたかったんだけどな」

「な、何でもは駄目っ!甘やかしちゃ駄目っ!」

「安心しろ、半分以下は冗談だ」

「は、半分以下……?だ、駄目だからねっ!?こっそり買ったりしても駄目だからねっ!?」

「分かった、覚えとく」

かなりの念を押してそう言うと、智大は楽しそうに笑った。
まさかまた冗談を言ってからかわれたのでは……?と思ったが、智大の目は本気に見えたので藍里は笑みを引きつらせてしまった。

「……何だよ、あれ……」

そんな二人の様子を遠くから見ている者がいたことはこの時、気付くことはなかった。