ダイニングテーブルに置かれたミルクたっぷりの淹れたてのコーヒーに、パックのまま出された昨日買ってきていたのであろうサンドイッチが目の前に置かれ、藍里は何度か瞬きをした。

「……食べないのか?」

「た……食べていいの?」

智大のじゃないのかと思って質問に質問を返してしまい声に出してから慌てるが、智大は視線を新聞に移すと一言、いい。と言った。

「それはお前に買ってきた」

「私に……」

言われてよく見てみれば、智大には確実に物足りないだろう一口サイズのサンドイッチが数種類並んでいる。
ゆっくりと手を合わせ、いただきます。と口にしてからサンドイッチを口にするとシャキシャキとレタスの歯応えがあって、トマトも甘くて美味しかった。

「美味しい……」

そう自然と口にして微笑み、また一口食べる。
自分の事を嫌っているはずの智大が自分に何かを買ってきてくれたという事実が嬉しくて、今朝はいつもよりほんの少しだけ多く食べられる気がした。

藍里が食べている間にコーヒーを飲み終わり、新聞も読み終わった智大は洗濯や掃除などの家事を始めたが自分と違ってきびきびと動く智大に肩身の狭い思いをしそうになる。
これは日頃食器の片付けしか家事が出来ない智大が提案した、休みの日の永瀬家の在り方だった。