「じゃあ……もう少し考えてみる。知りたかったらいつでも聞けるし、焦って決める必要ないよね……?」

「そうだな。ベビー用品も男女兼用の色合いが多いと聞いたし、性別が分からなくても問題ないだろ」

「ベビー用品かぁ……」

どんな物がいるのだろう。
おむつ、ミルク、哺乳瓶、肌着……と藍里がぼんやりと考えていたら、すでに藍里の思考が生まれてくる赤ちゃんに占領されてしまったのが分かったのか、智大が小さく笑った。

「来週にでも一度見に行ってみるか?」

「……うんっ!」

「その時に藍里のマタニティウェアも買うか」

「約束通り、智君が選んでくれるんだよね?」

「似合うか分からないぞ?」

「いいの。智君が選んでくれた物を着たいから」

照れ笑いをしながらそう言うと、智大は一瞬黙り、そして大きく息を吐いた。
どうしたのかと思っていると、智大が恨みがましい視線を向けてきた。

「お前は本当……何でこうも俺の理性を試すようなことばかり言うんだろうな?」

「ん?理性……?」

「……産後、本気で覚悟しとけよ?」

最後の言葉は声が小さすぎて密着していても聞こえなかったが、ただ智大が何かを耐えるような表情で項垂れ、肩を落としていたので慰めようと藍里は手を伸ばして智大の頭を撫でてみるのだった。