「すごいな、もうすっかり人だ」

休職が終わり、仕事に復帰した智大は夜遅くに帰ってきた。
食事が終わってソファーに場所を移し、今日の診察で貰ったエコー写真を見せると、智大が愛しそうに目を細めて見つめていた。

「そろそろ耳も聞こえるようになるんだって。外の音とか、私の声も聞こえるって言われたの」

「俺の声も?」

「うーん……多分?」

何せ藍里自身はお腹の赤ちゃんではないから、聞こえているのかどうかは分からない。
けれど、外の音が聞こえているならきっと智大の声も聞こえているだろう。
聞こえていたらいいな、と希望を持って曖昧な答えになりつつも頷いた。

「触ってもいいか?」

「うん」

智大は藍里のお腹に触る時、藍里が驚かないように必ず触れてもいいかを聞いてくる。

笑顔で頷くと智大はいつも優しい手つきで、まるで壊れ物に触れるかのように触るので擽ったくて、藍里は毎回小さく身動いでしまうのだった。

「……本当に膨れてくるんだな」

「そうだね……不思議……」

膨らむ気配を全く見せなかったお腹は、少しずつだけれど確実に膨らんできている。
藍里はやっと、赤ちゃんがお腹にいるんだ。と膨らみと共に自覚も持てるようになってきていた。

「早く出てくるといいな」

「まだ早すぎるから、もっとゆっくりでいいよ」

智大の言葉にクスクスと穏やかに笑いながら答えると、ギュッと抱きしめられる。
智大の逞しい胸板に擦り寄りながら、藍里は今日の診察での事を話した。