「智君?どうしたの?」

「……今度、一緒に選びに行くか」

「ん?何を?」

「マタニティウェア。必要だろ?……別に吉嶺が話に出したから言ったんじゃなくて、前から思ってたからな?」

視線を反らして、少しだけ恥ずかしそうに話す智大に藍里は目を丸くした。

「……もしかして、智君が選んでくれるの?」

「藍里が嫌じゃなければな」

「い、嫌じゃない……!智君に服を選んでもらうなんて、すごく久しぶりで嬉しい!」

智大に服を選んでもらったのなんて、お互いの誤解がとけて暫くした頃。
まだお互いギクシャクしていたあの日以来で、一年以上も前のことだ。

服などのお洒落に関してはそんなに興味のない藍里だけれど、それでも智大に選んでもらうとなると話は別だった。

「腹を締め付けるのは良くないって聞いたから早めに買いに行くか。外出用と部屋着、後は……」

「あ、あの……智君……部屋着なんだけど……」

必要な服の枚数を数えていた智大の思考を中断させるように、藍里はおずおずと話しかけながら智大の服を少しだけ引っ張った。
すぐに智大の視線が藍里へと落とされると、藍里は少し言い辛そうに視線をさ迷わせた。

「何だ?」

「あ、あのね?もし良かったら、なんだけどね……?」

「ん?」

「部屋着は新しく買うんじゃなくて、智君の服を貸してもらえたらなって……」

そうしたら夜勤の間だけではなく一日中、さらには毎日智大の服を着る口実が出来る。
智大の服を着るのが好きで癒されていた藍里は智大が休みで一緒にいてくれるのは勿論嬉しいのだけれど、智大の部屋着を着る機会がなくなってしまったことは少しだけ残念に思っていたのだった。