恐る恐るダイニングに顔を出す長い足を組んで椅子に座り、コーヒー片手に新聞を読んでいる智大がいた。

こそこそしてる藍里の気配にすぐ気付いて顔をこっちに向けるが、ひょこっと顔を出しただけで足を踏み入れる勇気が出てこない藍里の様子を見てすぐに眉を潜められてしまった。

「何してる?」

「っ……えっと、その……また起きられなくて……ごめんなさい……」

おずおずと相手の顔色を伺いながら話すのは悪い癖だとは分かっているけれど、簡単には治らなかった。
それどころかどんどん悪化していってしまった自覚があるのでどうしようもなく、また智大の顔色を伺うためにチラッと見てみると智大は、はぁ……。と溜め息を溢した。

「別に休みの日まで早く起きる必要はないだろ。自分の事は自分で出来る。子供じゃないんだ」

そう言われてしまえば藍里は頷くことしか出来なくて、会話もなくなってしまいどうしようかと考えていると智大が徐に立ち上がったので驚いてしまった。

「コーヒー飲むか?」

「えっと……その、自分で……」

「自分の追加のついでだ。いるのか?いらないのか?」

少し強めの言葉で返事を促され、藍里は慌てて、い、いるっ!と返事をした。
すると目の錯覚かいつも表情が変わらない智大がほんの少し笑みを浮かべた気がした。