待ち望んでいたインターホンの音が鳴り、藍里は弾かれるように顔を上げた。
すぐにモニターを確認すると智大がいて、藍里はエコー写真を手に玄関まで走った。

「お帰りなさいっ!」

「っ……ただいま?」

今までにない勢いで玄関のドアを開けて飛びつくように抱きついたからか、智大はしっかりと抱き止めてくれたものの驚きに目を丸くしていて、ただいまの言葉も疑問系になっていた。

「智君、あのねっ!聞いてほしいことがあるのっ!」

「どうした、えらく興奮して……」

「あのね……あ、とにかく入って!」

以前玄関前でご近所の老夫婦にイチャイチャしていたところを見られて恥ずかしい思いをしたことを思い出した藍里は、抱きついていた手を離すとグイグイと智大の手を引っ張った。
藍里の弱い力ではビクともしないはずの智大は藍里のしたいことを組んで、ちゃんと動いてくれる。

パタンとドアが閉まると靴を脱ぎ、玄関を上がったタイミングで藍里は智大にエコー写真を差し出した。

「これは?」

藍里が見せたモノクロ写真に、智大は表情を変えることなく疑問を口にしていた。
始めて見るこの写真がなんなのか分からないと言った様子の智大に、藍里は少し得意気に胸を張った。

「これはエコー写真なの。ここに写ってる白いところが、智君と私の赤ちゃんのお部屋だって!」

興奮しながら話す藍里と対称的に、智大はいつまで経っても無反応だった。
暫く待ってみても何の反応も帰ってこないので、不安になった藍里は恐る恐る智大の顔を覗きこんだ。