「こいつ、草食いそうになってたぞ」

「あら、そうなの。危なかったわ、ありがとう」

智大が手渡した赤ちゃんは千栄の胸に擦り寄り、言葉にならない声をあげながら小さな手を広げている。
土だらけのその手に苦笑しながらウエットティッシュで念入りに拭いている千栄を見ていると、藍里の隣に智大が座った。

「口煩いお前もこうして見ると、一応親っぽく見えるな」

「親ですもの。あんた達はいつなのよ、子供の予定は?」

「「こ、子供っ!?」」

千栄の問いかけに藍里だけでなく何故か吉嶺も反応すると、吉嶺はコホンと一つ咳をした。

「ま、まだ早いんじゃないですか?」

「何言ってるの。子供の体力嘗めんじゃないわよ。早く生まないと、子供と遊ぶのに体力ついていかないわよ」

「いや、でもそれは……」

何故か千栄と吉嶺の言葉の応酬が始まり、藍里は顔を赤くしたまま唖然としていると智大が耳元に顔を近づけてきた。

「……で、藍里はどうなんだ?」

「え……?」

「子供、どう思う?」

「っ……!!」

今まで聞かれたことも話題に上がったこともない話に藍里が固まると、智大は最初から藍里の答えを求めていたわけではないのか答えを待つことなくそのまま口を開いた。