「智君!」

夕方になり定時で仕事を終えた後、藍里は職場に迎えに来た智大に駆け寄った。

「お疲れ」

「ありがとう!……腕、ギプス取れたんだね」

良かった……。と微笑めば、智大も微笑みながら腕を持ち上げた。

「医者にはまだ早いってすごく渋られたけどな」

「え……大丈夫なの?」

「問題ない。これ以上訓練で遅れをとることの方が問題だ」

骨折してからというもの、満足に動くことが出来なかった智大は、同僚達が真摯に訓練に向き合っている様を見て、もどかしさを感じていたらしい。

これでやっと訓練に戻れると嬉しそうな顔をしている智大を見て、藍里は無茶をしないか少し心配になったが、無理をしないという約束を信じて何も言わないことにした。

「……あのね、今日のご飯のメインはステーキにしようかなって思うの。とびっきり大きいの!」

「お、いいな。それなら藍里も俺に付き合って、同じ大きさの肉食えよ?」

「ええ……!私は無理だよー」

軽口をたたきあいながら手を繋いで近くのスーパーまで行き、メインである肉をこっちがいい、あっちがいい、大きさはこれがいい、あれがいいと二人で話ながら選ぶ。

時折智大の藍里を見る眼差しが愛しげなのを見て、藍里は目を細めると智大の手をギュッと握っるのだった。