「小蔦、なんだか今日は楽しそうね?何か良いことあったの?」

鼻唄混じりに開店準備をしていると、先輩が不思議そうな顔をしながら問いかけてきた。

「実は今日、診察の結果次第で主人のギプスが取れるはずなんです」

「あら?予定より少し早くない?」

「えっと、仕事柄あまり片手が不自由だと困るのでお医者さんに直談判したそうです。決して無理をしないと言う条件付きで、状態が良ければ外してもらえるそうなんです」

「ああ……確かに小蔦の旦那の職業は特殊だものねぇ」

「……そこで先輩、お願いがあるんです。お昼に診察がどうだったか連絡が来るので、もしギプスが外れてたら定時で上がらせてもらえませんか?お祝いしたいんです」

両手を胸の前で組んで先輩に懇願してみれば、先輩は目を細めて微笑んだ。

「もちろん良いわよ。でも本当、一年前の小蔦とえらい違いね。
前までの小蔦なら、絶対旦那のために早く帰ったりお祝いしたりなんてしなかったのに」

「だって、今は主人のこと大好きですから」

えへへ。と照れ笑いしながら言うと、先輩も嬉しそうに笑っていた。

お祝いのご馳走は何にしようか、肉が好きだと言っていたからステーキにしようかな。と、仕事をしながら考えることも楽しくて、藍里は就業時間までずっと笑顔だった。