〈智大side〉

「……危なかった……」

さして重要ではなかった通話を切って絨毯に座ったままソファに凭れると、智大は天井を見上げて溜め息をついた。

待ち合わせ場所で、いつも控えめな服を着ている藍里にしては露出度の高い服装をしているのを見た時から誰にも見せたくなくて、どこかに閉じ込めたくて仕方なかった。
それを同窓会の為にと我慢していたのに、帰ってきて無防備な状態であんな可愛いことを言われたりされたりしたら……。

チラッと先程まで藍里が寝転んでいたソファに目を向けると智大はもう一度深く息を吐いた。

「指輪、か……」

指輪を贈り、つけさせるというのは藍里が自分だけのものであるという束縛の証。
そして、独占欲と周りの男への暗黙の牽制となる物だと智大は思っている。

本当は婚約した時にも式の時にもそれぞれの指輪を贈りたかったが、見合いの席で顔色悪く硬直し、見るからに怯え、こっちを一切見ようとしなかった藍里にそんな指輪を贈るのは苦痛でしかないことなど嫌でも痛感してしまった。

けれど、今なら喜んで身につけてくれるかもしれないと思った智大は微かな期待を抱きながら、未だに不自由な腕を見てからカレンダーを見た。

今日とその四日後に赤い丸を付けたのは藍里で、四日後の方には花の形にまでなっている。

職業柄、いつまでも片腕が不自由ではいざと言う時に動けないからと医者に無理を言ってギプスを取ってもらうことになっているこの日を心配しながらも、心待ちにしてくれているのであろう藍里に智大は愛しさを感じるのだった。