ついに同窓会の日。
藍里は手に持っていたスマホが震えたのに気付き、画面に表示された名前を確認してからそっとスマホを耳に当てた。

『悪い、遅くなった。もう来てるか?』

「うん。来てるけど急がなくていいよ、気を付けて来てね」

『分かった。あと数十分はかかるから、どこか近くの店にでも……』

「ううん。待ち合わせ場所で待ってみたかったから、ここにいる」

藍里が頑として譲らないのが分かったのか、智大が電話の向こうで、ふっと笑ったのを感じた。

『外にずっといるならやっぱり急ぐ。待ってろ』

「うん、待ってるね」

通話を切って藍里はスマホを持ったままの手を自分の胸にそっと引き寄せた。

今藍里がいる場所は、先日智大と待ち合わせをした駅前の噴水広場。
週末というのもあってか周りは仕事帰りの人や社会人、学生のカップルが多いし、藍里のように待ち合わせをしている人も多かった。

ーー智君、似合うって言ってくれるかな……。

今藍里が着ている服は、以前先輩と一緒に買いにいって先輩が選んだ服。

春らしく花の刺繍がされたバルーンスリーブに肩も鎖骨も見せているオフショルダー。
それにロングスカートを合わせるという藍里一人では決して選ばないような、可愛らしくもどこかセクシーな格好をしていた。

「……早く来ないかな……」

今日会う同級生の誰よりも綺麗だと思われたい。
先日のデートといい今日といい、藍里は特定の男性に良く思われたいと思う日が来るなんて自分でも信じられずにそわそわしていた。