「よし!小蔦は今日、私と同じ早上がりだったわよね?一緒に服を選びに行きましょう!」

「え?服、ですか?」

「そう、同窓会ってみんなちょっとお洒落してくるのよね。だから小蔦も然り気無くお洒落するのよ!」

普段から元気な先輩だけれど、今回は何故かいつもよりテンションが高い。
たじろぎながらも藍里は自分の服が仕舞われているクローゼットの中を思い出し、よそ行き用の服はないまでも、わざわざ買い足すほどではないと首を緩く振った。

「でも私、別にお洒落なんてしなくても……」

「久々に会う同級生の中でも、やっぱり小蔦が一番綺麗だって旦那に思われたくない?」

服は必要ない。そう思っていた藍里は最後の先輩の一言に固まり、次第に目を輝かせた。

「お……思われたいです……!」

「なら決まりね。私がコーディネートしてあげるから、小蔦の旦那を惚れ直させちゃいましょう」

「はいっ!お願いします!」

先輩の口車にいつの間にか乗せられていたのにも気付かず、藍里は仕事を手際良く終わらせ先輩と一緒に近くのブティックに向かった。
先輩は服を選ぶのが好きなようで、あれでもない、これでもないと色々着せ替え人形のように着替えさせられ、やっと終わった頃には藍里はくたくたになっていた。

「大丈夫?ちょっと遊びすぎたかしら?」

「あ、遊……?いえ、大丈夫です……」

聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたが、藍里は聞こえなかったことにして笑顔を見せた。

「私今から旦那と待ち合わせだからここで別れるけど、一人で帰れる?」

「大丈夫ですよ!子供扱いしないでくださいっ!」

「ごめんごめん。じゃあ、また明日!」

手を振りながら去っていく先輩は、凄く嬉しそうな顔をしていた。

「……待ち合わせ、かぁ」

そう言えばしたことなかったな。と思いながら藍里は今買ったばかりの服が入った紙袋を手に、足取り軽く帰路についた。