〈智大side〉

「と、智君……千栄が智君に代わってって……」

凄く申し訳なさそうにおずおずと話しかけてきた藍里からスマホを受け取ると、智大はすぐに耳に当てた。

『永瀬!あんたも藍里を説得しなさい!!』

「……相変わらず煩いな。説得って同窓会のか?」

『あら、話が早くて助かるわ。藍里と久しぶりに会いたいって子がたくさんいるのに、藍里が行かないって言うのよ』

「行きたくないなら無理に行かなくてもいいだろ」

『何言ってんのよ。藍里が行きたくないのは、あんたのせいでしょう?』

「は?」

何で藍里が同窓会に行かないのが自分のせいになるのか分からなかった智大が思いきり眉を潜めると、千栄は、本当に分からないの?と聞いてきた。

『同窓会って当たり前だけど男も来るのよ。それも、藍里のことを長いことからかって遊んでた男達がね。
だから藍里は今まで同窓会に怖くて行けなかった……さて、そんな原因を作ったのは誰だったかしら?』

「っ……!」

『でも、今の藍里は男なら永瀬にだけは心を開いてるでしょ?なら、あんたがボディーガードとして一緒にいれば、藍里は何も心配することなく久々に友達に会えるのよ。
だから、あんたが藍里に一緒に行こうって言えばいいの!』

「そんなこと……」

『じゃ、頼んだわよ!』

言えるか。と言い終わる前に、千栄は早々に電話を切ってしまった。
スマホを藍里に返した智大は頭を乱暴に掻き乱して溜め息をつくと、藍里は心配そうにおろおろしていた。

「あいつ……相変わらずキツいことを……」

歯に衣を着せない、明け透けな言い方で正論を言うのは昔からだった千栄の言葉に少なからずダメージを受けていると、藍里が眉を下げてじっと見つめていたことに漸く気付いた。

もう一度小さく溜め息をつくと、藍里の小さな手に左手で触れた。

「……一緒に行くか、同窓会」

「え……で、でも……」

「俺がずっと傍にいてやるから」

千栄に言えと言われた台詞よりも恥ずかしい台詞になったことに内心舌打ちすると、目を丸くして驚いていた藍里はやがて笑顔になって頷いた。