〈智大side〉

「なあ藍里、腕が治る頃に……」

「え……?」

智大は先日からずっと考えていて伝えようとしていたことを口にしようとした時、まるで示し合わせたように二人のスマホが着信を告げた。
確認するとお互い、小学校時代からの友人の連絡のようで、電話の邪魔にならないようにか藍里が少し離れた場所まで行ってから通話ボタンを押していた。

「もしもし、千栄?え?うん、仲良くやってるよ。この前はお騒がせしました、話聞いてくれてありがとう」

藍里の電話の相手は幼稚園からの幼馴染みで、智大もよく知る人物だった。
たまに聞こえる内容からして、この前喧嘩した時のことを相談していたのだろうと思いながら智大も自分のスマホの通話ボタンを押した。

『あ、やっと出たな!久しぶり!忙しかったか?』

「久しぶり。まあ、忙しかったな」

藍里と話すのに。とは言わずそれだけ言うと友人は、うわー、悪いな!かけ直すか?と言った。

「いや、今は大丈夫だけど……電話なんて珍しいな?どうした?」

『実はさ、今度みんなで集まって同窓会やろうって話になってさ』

「同窓会?」

『そう!特別仲良かっただろ?六年の時のクラス……』

「えええええっ!?」

友人の話を聞いていたら、離れて電話していた藍里が驚きのあまり大きな声をあげて慌てていた。
恐らく同窓会の話を藍里も聞いたのだろうと思っていると、友人が何か言っているのに気付いて智大は再び電話に集中した。

『なんだ智大、女といるのか?忙しいって言って実は……』

「切るぞ」

『えっ!?ちょっ……待っ……』

友人の言葉を無視して通話を切った智大は、未だに狼狽えている藍里を見つめた。
何やら説得されている様子の藍里は困ったように眉を下げ、そして智大の方に視線を向けた。